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日本開通130周年!古くて新しい路面電車の事情。

日本開通130周年! 古くて新しい路面電車の事情。

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クルマと並走することもある路面電車は、車窓からの風景が電車や汽車と異なり独特の世界観に浸れる。日本に路面電車が開通して130周年。歴史ある公共交通機関にいま注目が集まっている。電車や汽車のような専用軌道だけでなく、クルマの行き交う道路を併用する路面電車。改札がある駅ではなく、道路の中央分離帯に停留所が設置されているような路線も。

執筆者: 野上真一

 日本では130年前、明治28年に路面電車が開通。明治から大正にかけて、全国的にその交通網が広がっていった。日本に現存する路面電車のほとんどに100年以上の歴史があり、1948年に開業した富山県の万葉線がその最後。東京都内では、最盛期には40路線以上へと拡大したが、経済発展にともない産業を支える貨物車や自家用車が増え、道路は絶えず渋滞するようになる。路面電車はやがて廃線へと、後退の一途を辿ることとなり、現在都内では都電荒川線、東急世田谷線の2路線のみとなっている。
 しかし世界では、二酸化炭素を大量放出するクルマに代わって、エコでバリアフリーな路面電車の活用が見直されており、その数、約50カ国400都市で運行しているともいわれている。日本では2023年に芳賀・宇都宮LRT「ライトライン」が新設され、新たな公共交通機関が人と街を繋ぐ、ネットワーク型コンパクトシティを形成。事業者の想定より約5カ月も早く、累計利用者数が900万人に達成。北関東初の50万人都市となった宇都宮市で、今後も持続的に発展できるスーパースマートシティの実現に向けて一役担うであろう新設路面電車の活躍に期待が高まっている。

長崎電気軌道

開通110周年を迎える長崎電気軌道「電鉄さん」 ©️長崎電気軌道

開通110周年を迎える「電鉄さん」

「ななつ星in九州」など数々の列車を手がけた工業デザイナーの水戸岡鋭治氏によるデザインの「みなと」を有する長崎電気軌道。利用者からは「電鉄さん」の愛称で親しまれ、特別料金など必要なく、通常の営業車両として運行。
©️長崎電気軌道

芳賀・宇都宮LRT

注目の最も新しい路面電車、芳賀・宇都宮LRT「ライトライン」 ©️宇都宮市

注目の最も新しい路面電車「ライトライン」

広大な関東平野から日光連山や那須連山を望み、鬼怒川の清流など豊かな自然に恵まれた北関東の中枢拠点を運行する芳賀・宇都宮LRT「ライトライン」。宇都宮駅東口停留場〜芳賀・高根沢工業団地停留場の約14.6㎞を結ぶ。
©️宇都宮市

京福電気鉄道

歴史的景観の中を運行する京福電気鉄道「嵐電」 ©️京福電気鉄道

歴史的景観の中を運行する「嵐電」

歴史と文化、豊かな自然が息づく古都に1910年3月に開業した京福電気鉄道。現在は四条大宮~嵐山の約7.2㎞を結ぶ嵐山本線、北野白梅町~帷子ノ辻の約3.8㎞を北野線の2系統で運行している「嵐電」。
©️京福電気鉄道

都電荒川線

ピーク時には40もの都電路線があり現在唯一残った「東京さくらトラム」(都電荒川線) ©️東京都交通局

ピーク時には40もの都電路線があり現在唯一残った「東京さくらトラム」

1903年に東京電車鉄道が開業。1911年に東京市電気局が路面電車事業を買収し、昭和18年の最盛期には1日に193万人が利用。路線廃止を余儀なくされ、残った27系統と32系統を一本化し、「荒川線」と改称。沿線に桜が多いことから愛称を「東京さくらトラム」と決定。
©️東京都交通局

函館市電

函館山、五稜郭公園を巡る函館西部地区の足「函館市電」 ©️函館市企業局交通部

函館山、五稜郭公園を巡る函館西部地区の足

1913年に開業し、最盛期には約17.949㎞を運行。現在は函館市の西部地区を中心に湯の川~函館どつく前、湯の川~谷地頭の2系統、約10.9㎞を運行。「函館市電」は全区間、道路との併用軌道。
©️函館市企業局交通部

阪堺電気軌道

天王寺〜堺を繋ぐ大阪唯一の路面電車「阪堺電気軌道」 ©️阪堺電気軌道

天王寺〜堺を繋ぐ大阪唯一の路面電車「阪堺電気軌道」

前身となる大阪馬車鉄道が1900年に開業。現在、上町線と阪堺線の2系統を運行。区間の大阪市南部エリアは下町情緒や高級住宅地があり、堺市エリアは茶の湯文化や堺包丁などが有名。
©️阪堺電気軌道

この記事を書いた人

90年代に人気を博した伝説の雑誌「アウトドアイクイップメント」編集長に就任以降、アウトドアライフスタイル誌「HUNT」創刊など編集長職を歴任。また60ヶ国以上でサーフ&キャンプを実践。日々、波乗りに勤しみ自由な暮らしを送る。

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